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国をまたいでビジネスを展開するにあたり同一の機器を使ってサービスを提供しようとすると極めて広範囲なノウハウの蓄積が必要となります。今回はそのうちの一つ、一般的なサーバ・ネットワーク機器に関する輸出について取り上げます(スパコンなどは輸出貿易管理令に該当する可能性があるのでここでは除きます。あくまでPCサーバを前提としています)。

中国に限らずサーバ機器・ネットワーク機器の中には暗号化チップなど製品に含まれる一部の機能などが当該国の法律などによって許可制であったりそもそも持ち込みが禁止されているケースなどもあるため、メーカーやベンダー・商社など取り扱いに慣れている人以外が自社の機材(正確には、自社の中国法人に対して売却することになるケースが多いのでは)として国境をまたいで持ち運ぶのは十分な注意が必要です。

以下でいくつかポイントについて説明しますが、ここでは中国に対する機器の持ち込みのみを想定していますので、いわゆるキャッチオール規制で想定するような、中国を介し、仕向け地がいわゆるブラック国に該当する第三国へ持ち込むような場合などの手続きは対象ではありません。(キャッチオール規制に該当するかどうかは輸出者自身が確認することになっています。また仕向け地がホワイト国の場合にはこの対象ではありません)

■中国に輸入できるものかどうかの確認
正確には、中国に輸入できるかと、原産国が中国に対して輸出を許可しているのかの2点の両方がポイントです。中国に輸入できるのかどうかという点では、商用暗号管理条例による暗号化機能を含むソフトウェアで事前に許可をとっていないプロダクトの場合や、下に挙げるような中国で使用するための規制をクリアしているかどうかがあります。一方、ソフトウェアや暗号の基準によっては原産国が中国に対して輸出を許可していないケースがありますので確認が必要です。通常はこれらはメーカーに聞けば教えてもらえる内容です。暗号まわりについては、通常の業務アプリケーションでもサーバとの間の通信を暗号化しているケースの場合などには影響がある可能性があります。

■中国で使用できるものかどうかの確認
たとえばブロードバンドルーターなどで、直接公衆網につなぐような機器の場合には電信設備入網許可証を取得している機器であることが必要です。これを取得していない機器を接続することは電信設備入網管理弁法で認められていません。また、CCC(China Compulsory Certificate)という製品安全強制認証制度を持っています。覚えている方も多いと思いますが、中国に輸入するFirewallなどの機器についてソースコードを全て開示しないと許可しないという規制をかけようとして諸外国から猛反発を受けて撤回しましたが、これはCCCの一部の規制でした。

具体例として、YAMAHAは、中国市場向けにRTX1200とRTX800というルータを販売していますが、これは中国で適切に利用できるように全て手続きがなされています。技術的には日本で使えるでしょうが、日本で使うことは想定されていませんし販売もされていません。なお、日本でもこれに類する様々な規制は当然ありまして、別に中国に限った話しではありません。いくつかのメーカーのL2スイッチは、同一型番ではあるもののVPNまわりで中国の規制をもろに受けないように制限をかけているものあります。

■非該当証明を事前に取得しておく
経済産業省が定めているリスト規制・キャッチオール規制に該当するかどうかを事前に確認する必要があります。その上で、一般的なサーバ・ネットワーク機器だとそもそもこれに当てはまらないケースがほとんどですが、輸出時に税関で「本当にこの機器が非該当なのかどうか」を確認されるケースがあるため、輸出の段階では事前に非該当証明という書面をメーカーから発行してもらうことが一般的です。サーバ、ネットワーク、ストレージ機器などについては当社でも非該当証明を出して頂いた事例がいくつもありますが、いずれも必要な手続きを経れば難しくありません。多くの物流業者は、中身については型番からでは分からないこともあり、この非該当証明の書面を求められます。

■通関に要する日数
通関に要する日数はあまり一般的な数字はありません。具体的には貨物事業者にお尋ねいただくべきですが、一般的に知っておいて頂きたいのは、北京や上海などの大都市の場合には通関量が多く、また新しい規制が導入された場合に真っ先に対象となることがあります。逆に、地方空港の場合には通関量が相対的に少ないことや税関の厳しさがまちまちであるようです。さらに、春節などの長期休暇、中秋節や国慶節などの連休などに重なると極端に通関が遅くなることがありますので十分に注意が必要です。

■課税の確認
日本も海外からの輸入時にはその内容によって消費税などの課税対象となり課税されることがありますが、中国でも同様です。通関時にどのような税金が課税されるのかは予め調べる必要があります。

■中国内での輸送品質の確認
運ぶ中身はいずれも精密機器です。日本国内の発送元から空港まで、そして日本の空港から現地の空港まではそれなりの輸送品質が期待できますが、現地の空港についてからは、中国の輸送品質が必ずしも高くないため、精密機器の場合には日本から指定した業者(日系もしくは外資系の配送会社を使うか、中国国内で精密機器の運送を専門としている会社)に頼むことが必要です。混載の場合にはさらにリスクが高まりますのでチャーターをすることも検討が必要です。

なお、ここでは過去の経験の一部について記載しています。実際のお取り扱いの際にはお付き合いのある貨物事業者に詳細をお尋ねください。

※本記事は2011年1月にchinainternetreview.comに掲載したコラムを加筆・訂正したものです。